やはり、世間は足元を見る
市の美術館の展覧会で、アーティストの作品を見ながら考え込んでいた。
タイトルが「足元の世界」というその展示は、自然や人間の営みを通じて、世の中の価値と意味を問いかけてくるよう感覚を感じさせた。

作品の対象は一人の日本人女性。　彼女は小さな工場で働く、名もなきおじと会話を交わす様子。
距離の近さと遠さ、人間関係の微妙な違いに目を向けさせられた。
これが世間というものなのかもしれない、と感じた。

私は空想の中で、言葉の隙間に日本語の癖を感じながら、対話した。
日本では、一般に「自由」が大切とされる一方で、基本的に他者の目を気にして行動する。
子供のころから「注意しなさい」「オジサン（人の目があるよ）」と言われて育つのである。
こうした社会的認識は、今でも変わらず世間では続いている気がする。
ふと、「仏教における仏性とは何か？」という問いが浮かんきた。
教えでは…仏性とは、人間すべてが持つ尊い本質とされるが、世間の目はそれすら否定することがある様な気がする。

小さな出版社で働いていた頃、アメリカのメーカーとの共同企画に関わる機会があった。
その時に感じたのは、日本人とアメリカ人の認識の違いは、思っていた以上に深いかも　と思った。
「日本では一応本 人 の意見は尊重されるが、最終的には世間の「空気」で対応が決まることが多い。
が、対応が曖昧だと、問題が複雑化する。これが解決から遠ざかる要因の一つだろう。」と感じた。

女性と男性、子どもと大人。…人々の関係には、興味深い違いと、共通点がある。

前回の展覧会では、先生と生徒の会話を軸にした様な物語が印象的だった。

仏教をベースにした表現は、どこか不思議で温かみがある気がする。
肯定と反省 を同時に抱えるその世界観には、確かに仏性が宿っていた。

社会とは何か？
その問いに、正確な回答が存在しない。
けれども、今の世間は足元を見る。つまり、相手の立場や弱さにつけ込んで、必要以上の圧をかける。

それが世界や世間の現実の一面であり、過去の行動を見返して「やはりそうか」と思う瞬間がある。
「ある男性の話を思い出す。」彼は美術館の作品に感動し、生活の中に対話の重要性を感じ始めたと言った。‥‥「たぶん、真実だろう。」

表現の力は、確かに人を変える。意味の深さに気づき、今では、仏教的な考え方をも研究するようになった。こうした思いは、今のアーティストにも通じるところだ。
最後に、一緒にいた友人がこう言った。「足元を見る人がいる一方で、足元から世界を見つめる人もいる」と。

その言葉には、仏性の響きがあった。
世間は足元を見る。でも、それだけじゃない。そこから始める物語もあるの気がする。

風の時代は価値観が変わり、より…個人の生き方や幸福感が尊重されるようです。

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